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フルトヴェングラーの右腕の動き (続きの話) [音楽]


1947年5月25日ベルリンフィルでのフルトヴェングラー復帰演奏会が近づ
くともうベルリンの街は異常な雰囲気に包まれたと言う。
フルトヴェングラーが登場するとまだ一音も発しないうちに観客は総立ちに
なり、熱狂的な拍手、歓声で迎えた。切符を手に入れるために家財道具や家
電品を売ってでも聴きたいと思った熱狂的な2000人の観衆だった。
演奏が終わったときは拍手と歓声は15分間以上も鳴りやまず、フルトヴェ
ングラーは16回、ステージに呼び戻されたと言う。
そのときの演目はベートーベンのエグモント序曲、交響曲5番と6番。
歴史的なコンサートとして残った。
フルトヴェングラーの独特な震えるような指揮についてのいろいろな立場の
人の話が、中野雄氏の「ウィーン・フィル音と響きの秘密」に書かれていて
面白い。ある日本のオーケストラの有名なヴァイオリニストがフルトヴェン
グラーが振るベルリンフィルの映像を見て「こういう指揮者とはやりにくい
ですねえ。指揮の技法が古いし、指揮棒を持った右手がブルブル震えていて
拍子も不明確です。」 かたや伝説のクラリネット奏者レポルド・ウラッハ
の言葉。「何と有り難いことだ。巨匠と協演することでこんな幸福感を味わ
うことができて、その上報酬までいただけるとは!」
中野さんの恩師の丸山眞男氏は精魂傾けてフルトヴェングラーの研究をして
いたそうだが、ベートーヴェン第九の、第一楽章最初の16小節のことが気に
なって、あの振り方はフルトヴェングラーが意図的にやっていたのかどうか、
ウィーンフィルの古参楽員に聞いてほしい、と中野さんに頼まれたそうだ。
この続きは中野さんの本をぜひ読んでください。

(つけたし)
フルトヴェングラーはオーケストラを歌わせるために右腕の動かし方を考え
抜き、夜の散歩でも腕を振るのをやめなかったので、遂に挙動不審で警官の
尋問を受けた、という挿話があります。


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コメント 2

furt-wan

こんにちは。
この日(1947.5.25)の演奏は感動的です。
もちろん、CDの音は当日の音の何十分の一のものでしか
ありませんが。
by furt-wan (2007-05-16 16:03) 

ゆき

コメントありがとうございます。5番の出だしというのは、どのコンサートでも緊張します。フルトヴェングラーの力点を示さない震える指揮というものを実際に見て聴きたかったものです。
by ゆき (2007-05-16 20:24) 

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