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2001年哲学の旅/池田晶子編・著 [読書]

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お奨め本です。
池田晶子編・著「2001年哲学の旅」(新潮社)は肩がはらず、いつでもどこからでも読める楽しい本です。
内容は、池田晶子さんですから、もちろん哲学の話ですが、永沢まこと氏のきれいなさし絵入りの旅行記が入っていて、これがスイス、オーストリア、ドイツそれにギリシャ、トルコなど、史跡ならぬ、「哲学の聖地紀行ガイド」なのです。池田さん編としてはすごく珍しいなと思います。ギリシャやトルコは行ってみたい国だし、ドイツもまだなので興味があります。
気になる哲学者の簡単な紹介もしてあって、旅心を誘いますね。

それから対談がたくさん収められていてこれがまた面白い。
哲学者との対談は三つ入っていて、一番目のH.G.ガダマー氏との対談は、最初から見事にすれ違っていて、読んでいてもサッパリわからない。終わり頃になって、池田氏「私は○○だと言いたいのです。」ガダマ氏が「私が最初に言おうとしたのはそのことなのです。」、池田氏「なんだ同じ事を考えていたんじゃないですかぁ。」・・・。笑ってしまいます。読者としては、なぜすれ違ったのか、なぜ突然一致したのかよくわからないのです。よくわからないけど、こんな風に二人の哲学者が勘違いをしながら話している様がなぜか可笑しい。それにガダマ氏は100歳、日本の若くて美人の哲学者が「何を言いたいのか」、どうも最初は真剣にとらえていなかったようにも読めるのです。

哲学者ではなく、科学の先端を行く研究者との対談も傑作です。宇宙素粒子研究の戸塚洋二氏との「『無』は存在するか?」、ウィルス研究所の畑中正一氏との「ウィルスは生物か?」、ガンセンターの池田恢氏とは「『死』は、どこにある?」。どれも面白い対談でした。でも池田氏はなんとか「存在」について語らせようとしているのだけど、科学者は「それは哲学の分野・・」とみな完全に割り切っていて、池田氏の土俵には乗りませんでしたね。
どこかですぱっと割り切って考えないと、科学者などやっていけないでしょう。

池田晶子氏本人へのインタビューもなかなか面白いものでした。「私という存在」を感じたのは池田さんが2才のとき、歩きだしたときに、自分はこうして歩いているけど、それと一緒に「私」も動いている。歩くことによって決して後ろに「私」は置きざりにはならないのだ、と思ったときだそうで、2才の子どもがそんなこと感じるものか、とまたこれは不思議なはなしだと思いました。
下世話な「池田のお悩み相談室」まであって、バスや電車の中で読むには最適の本でした。
あ、それから池田晶子傑作の「帰ってきたソクラテス」も一部分入っています。(何度読んでも面白い。)おかげでヘーゲルの倫理学も読みたくなりましたね。
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ayu15

バロックとか哲学あるかも?

by ayu15 (2008-05-24 20:11) 

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