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日展三山ー東山魁夷、杉山寧、高山辰雄ーとドラッカー・コレクション [芸術]

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(信濃美術館にて)

8月17日、ドラッカー・コレクション(水墨画)と日展三山と言われる東山魁夷、杉山寧、高山辰雄の展覧会に行って来ました。

<ドラッカー・コレクション>

水墨画というのは近いようで遠い。
身近な所でよく見かけるので漠然としたイメージはあるものの、「水墨画」を美術館でしっかり観るのは初めてでした。

今回展示された111点は、経営学の父と呼ばれるピーター・ドラッカーが長い歳月をかけて収集した、室町時代の山水画、江戸時代の禅画や文人画など200点あまりのコレクションのうちの111点。

ドラッカーが水墨画になぜ惹かれたのか。
水墨画とは何かを知るために、画と共に展示されているドラーーカーの言葉を丹念に読みながらの鑑賞でした。

ピーター・ドラッカー(1909年〜2005年、ウィーン生まれ)はナチスの台頭により、1933年ロンドンに脱出し、ロンドンの銀行で勤務。
ある時、にわか雨にあい雨宿りのため偶然入った場所で日本美術展覧会が開かれていて、そこで見た水墨画に強く感銘を受けます。その後アメリカのワシントンに移住し、仕事の合間に日本美術コレクションがあるフリーア美術館に通い続け、水墨画への憧憬がますます深まっていきました。
第二次世界大戦が始まろうとしていた時で、「水墨画を見ているときだけが正気を取り戻した」と述べています。
それから25年後の1959年に初来日。
以後何度も来日し、少しずつ少しずつ30年もの歳月をかけて水墨画を集めたそうです。

一体、水墨画の何がドラッカーの心を捉えたのか。

(ドラッカーの言葉を引用すると)

「印象派は人々に『見せよう』とし、表現派は『知らしめよう』とするが、水墨画は『知らせ体験させようとする』」
「日本の山水画は見る者を招き入れ、むしろ入ることを望んでいる」
「日本の山水画家は、『人は自然の中で生き、自然は人ぬきでは完全ではない』としている」

水墨画に描かれるのは、岩、山、樹木、人家、船、橋、そして人の姿・・
なるほど、そう思ってよく見ると、高い山に松の木を背景に豆粒のような大きさで、船をこぐ人、橋を渡る人などが描かれています。
この小さくも実在感のある人物が画の中にあるため、まるで別の世界を覗き込んだような気持ちを起こさせるような気がします。

濃淡の墨を使い分け、無駄な線を一切そぎおとした画は、西洋画の世界から見たら異次元の世界として見えただろうと思います。

ドラッカーは、西欧と中国と日本の絵画を比べ、
西欧の絵画は幾何学的構図であり、中国画は代数的(均衡を重視)であり、
日本は、トポロジカル(位相幾何学的)であると述べています。
「まず線をひくのではなく空間を見る、全体的な形態をとらえる、すなわち『デザイン』である」と。

コレクションの中では、室町時代の作品、柴庵の『柳燕・竹石鶄䴇図』、海北友松『翎毛禽獣図』、立原杏所『葡萄図』が心に残りました。
つまりわかりやすかった、ということですが。

水墨画、山水画、文人画で困るのは、漢字が読めないということ。
題名も、また絵の中に書かれている文字も、読めそうで全く読めないのがつらいものです。


<日展三山〜東山魁夷、杉山寧、高山辰雄>

東山魁夷館では館の25周年記念として、日展の三山と呼ばれる東山魁夷、杉山寧、高山辰雄の作品が展示されていました。
実は東山魁夷の絵も、画集やカレンダーなどで見るばかりで、本物を見るのは初めてでした。
これは感動しました。
「こうだったのか!」という驚きと、「やはり凄い」という感動。

お馴染みの絵の大きさも知らなかったわけで、レコードやCDで知っている曲の生演奏を一流のオーケストラで初めて聴いたようなものです。
音楽でも絵画でも、まったく知らないでいきなり触れるのと、多少の知識があってはじめて本物に触れるのでは、感動の大きさが変わってくるという気がします。
もちろんドラッカーのように、「日本の水墨画を見た瞬間、私にとって特別なものであることがわかった。」ということもたくさんありますが。

三山の展覧会というのは、それぞれの個性が、三山が並ぶことでさらに際立ち協奏し合い、展示室全体が不思議な力に満たされた空間になっていました。
この3人は生まれた年が数年しか違わず、3人の芸術大学の卒業制作が並んでいました。
東山魁夷『焼嶽初冬』(1931年)、杉山寧『野』(1933年)、高山辰雄『砂丘』(1936年)。
圧倒的な、才気ほとばしる作品で、若いときにもうその才能というのは現れてしまうものなのだとあらためて思いました。

覚え書きとして、強いて好きな作品を2つずつ挙げるとしたら、
杉山寧では、『穹』『孔雀』、高山辰雄『少女(1979年)』『星辰』、東山魁夷『冬華』『白馬の森』。

ドラッカー・コレクションと日展三山を見るのに途中休憩を入れて三時間かかりました。
たまにはこういう日があってもいいものです。

信濃美術館は回りの環境が素晴らしく、外に出ると、松の並木(まるで東山魁夷の『松庭』のような立派な松)とその後ろに青く見える山々、城山公園の花と噴水、善光寺の塔など・・絵の鑑賞でぼーっと疲れた目と頭を休ませてくれるのにふさわしいものでした。

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ドラッカー・コレクションは8月23日で終わりましたが、日展三山は9月1日まで開催しています。

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