フルート発表会〜モーツアルトのアンダンテ [音楽]
さて、モーツアルトのアンダンテを発表会で演奏することになり、練習に取りかかったら、やはり難しい・・。易しくて難しい。
シンプルな曲なので、かえって「とっかかり」が見つからない。
先生曰く、「モーツアルトのアンダンテはハ長調。ハ長調というのはもっとも明るく澄んだ音で、色でいうなら『白』だ」
明るくおだやかで、ドラマチックなところはなく、あっさりした曲、なのである。確かに「白色だな〜」と思う。
「白色」なので、何をどう表現したらいいかわからない。風景が見えてこない。
それで、当たり前のことだけれど「音符の一つ一つを大事に演奏すること」と、自分なりに目標をたてた。
こういう意識で吹いたことはなかったので、この練習は思わぬ楽しさがあり、はじめて「演奏に集中する」ことができた。
それまで、「集中する」ことができなかったのは、一つの音符を大きな流れの中の一石としか考えていなかったためだとわかった。
実際には大きな流れの中の一つの音にはちがいないのだが、全体の流れをつくるのは一つ一つの音であって、それは他の音には置き換えられない大事な音だと気が付いた。(今までいかにきちんと曲と向き合って来なかったか、ということです。)
一つの音の強さ、長さ、響き、前の音と次の音へのつながり、ニュアンスが課題になることが、アンダンテの練習でわかった。今さら・・ですが。
そうなると、演奏するためには全神経を使うことになり、演奏中に他のことが頭に浮かぶことはまったくなくなりました。
以前は、演奏中に「そろそろコーヒーを飲みたいな〜」とか「夕飯は何にしようか」とか、明日の予定だとか、とりとめのないことがしょっちゅう頭に浮かんできて、先生に「演奏中に何を考えていますか」と聞いたことがあるほど。
「自分が出す音と他の演奏者が出す音。」と、当たり前のそっけない答え。
ともかく「白色」のアンダンテの練習のおかげで、やっと練習とはこういうことか、とわかったような気がしました。
モーツアルトのアンダンテは、1992年にムラマツが出したヴィデオ(DVD)『フルート・マスタークラス』という虎の巻があります。(講師;吉田雅夫 フルート; ピアノ;島崎佐智代)
吉田先生の話はモーツアルトの時代の演奏についての細部な事柄に及ぶので、その辺のレクチュアーは最初はとばして、小泉先生の演奏だけ聞いて練習していたけれど、そのうち、この音はどうするのだろうと、いろいろと試している間に、結局、吉田先生の講義のすみずみまで勉強することになってしまいました。
おかげで、全音的半音階と半音的半音階の区別、イ音について、男性終止と女性終止、トリルのつけ方、アンダンテとはテンポだけを示すのではなく音楽的性格を現す、悪魔の音と言われた三全音、ヘキシコード・・などなど、がわかってきました。
吉田先生が「モーツアルトをやるならまず、このアンダンテをやれと師に言われた、なぜかというと簡単な曲の中にモーツアルトを理解するための全てが入っているから」と仰っていますが、
なるほど、私の楽譜にも、ほとんどすべての章節にいろいろと書き込みが入りました。
ブレスのことをこんなに意識したのも始めてだした。練習曲のときはあまり意識していなかったけれど、ブレス記号も音符と同等の細心の注意が必要でした。
一番の問題は音質、音の響き・・これは付け焼き刃ではどうにもなりません。だからレッスンでソノリテ練習の時間があんなに長かったのだ、と今さらわかっても遅い・・。
それを今までおろそかにしてきたので、急に、良い音は出ない。時々はきれいな音をつくることはできるが、全ての音にヴィブラートをかけ響かせるのは非常に難しい。
9月のある日、いつものようにエチュードをやったあと、「アンダンテやってごらん」と言われ、一度ざっと吹いておおまかなチェックが入りました。
それからもレッスンはいつも通りにエチュードの練習だけ。
10月に一回、ピアノ併せ
さすがにこのときのレッスンはエチュードはやらずアンダンテだけで、まず私が吹き、チェックが入り、先生が演奏してみせてくれ、次にまた私が吹いてこの日は終わり。
11月10日リハーサル
その後のレッスンもアンダンテではなくエチュードの練習のみ。
11月23日が本番。あっさりしたもの。
先生の前で吹いたのはリハーサル含めて3〜4回で本番になりました。
発表会というのは日頃の練習成果を発表するだけで、練習曲の練習の方が優先で、発表曲は各自やっておく宿題にすぎない、ということでしょう。
さて、本番の結果は・・
4カ所くらいミスがあり、がっかりでした。リハーサルではミスはなく、もっとうまくいくと思ったのだけれど・・。
あとで録音CDを聞いてみると、音はまあまあ私としてはよく鳴っている。けれどミスがあってはどうしようもない。
吉田先生の教本に「楽譜は絶対に間違えてはいけません」と当たり前のことが書かれている。
確かに、間違えたら絶対にダメなのだ。瑕があっては音楽にならない。それが身にしみて感じられた発表会でした。
発表会は失敗だったけれど、アンダンテの練習効果はかなりあって、集中の仕方がわかったので、今練習しているガリボリディは毎週一曲合格のペースで順調に進んでいます。
先生にも「いい音出るようになった。フルートしているね。」と一度だけほめられ、やっとフルートの演奏とはどういうものかが分かり始め、練習が楽しくなってきました。
練習が楽しくなるまでに3、4年もかかるとは・・。「石の上にも3年」です・・。
2013年のレッスンは、ガリボルディのグランドエチュードのNO.8まで終了して終わりました。
追記;
モーツアルトがアンダンテを作曲したのは1778年で、フルートという楽器も今とはおそろしく異なり、出せる音も限られている。
(フルートに限らず、すべての楽器が今日のものとはちがい、不自由さがあったはず。)
その時代に、200年以上たった今でも、もっとも美しいとされる数々の音楽が作曲されたというのがとても不思議な感じです。
シンプルな曲なので、かえって「とっかかり」が見つからない。
先生曰く、「モーツアルトのアンダンテはハ長調。ハ長調というのはもっとも明るく澄んだ音で、色でいうなら『白』だ」
明るくおだやかで、ドラマチックなところはなく、あっさりした曲、なのである。確かに「白色だな〜」と思う。
「白色」なので、何をどう表現したらいいかわからない。風景が見えてこない。
それで、当たり前のことだけれど「音符の一つ一つを大事に演奏すること」と、自分なりに目標をたてた。
こういう意識で吹いたことはなかったので、この練習は思わぬ楽しさがあり、はじめて「演奏に集中する」ことができた。
それまで、「集中する」ことができなかったのは、一つの音符を大きな流れの中の一石としか考えていなかったためだとわかった。
実際には大きな流れの中の一つの音にはちがいないのだが、全体の流れをつくるのは一つ一つの音であって、それは他の音には置き換えられない大事な音だと気が付いた。(今までいかにきちんと曲と向き合って来なかったか、ということです。)
一つの音の強さ、長さ、響き、前の音と次の音へのつながり、ニュアンスが課題になることが、アンダンテの練習でわかった。今さら・・ですが。
そうなると、演奏するためには全神経を使うことになり、演奏中に他のことが頭に浮かぶことはまったくなくなりました。
以前は、演奏中に「そろそろコーヒーを飲みたいな〜」とか「夕飯は何にしようか」とか、明日の予定だとか、とりとめのないことがしょっちゅう頭に浮かんできて、先生に「演奏中に何を考えていますか」と聞いたことがあるほど。
「自分が出す音と他の演奏者が出す音。」と、当たり前のそっけない答え。
ともかく「白色」のアンダンテの練習のおかげで、やっと練習とはこういうことか、とわかったような気がしました。
モーツアルトのアンダンテは、1992年にムラマツが出したヴィデオ(DVD)『フルート・マスタークラス』という虎の巻があります。(講師;吉田雅夫 フルート; ピアノ;島崎佐智代)
吉田先生の話はモーツアルトの時代の演奏についての細部な事柄に及ぶので、その辺のレクチュアーは最初はとばして、小泉先生の演奏だけ聞いて練習していたけれど、そのうち、この音はどうするのだろうと、いろいろと試している間に、結局、吉田先生の講義のすみずみまで勉強することになってしまいました。
おかげで、全音的半音階と半音的半音階の区別、イ音について、男性終止と女性終止、トリルのつけ方、アンダンテとはテンポだけを示すのではなく音楽的性格を現す、悪魔の音と言われた三全音、ヘキシコード・・などなど、がわかってきました。
吉田先生が「モーツアルトをやるならまず、このアンダンテをやれと師に言われた、なぜかというと簡単な曲の中にモーツアルトを理解するための全てが入っているから」と仰っていますが、
なるほど、私の楽譜にも、ほとんどすべての章節にいろいろと書き込みが入りました。
ブレスのことをこんなに意識したのも始めてだした。練習曲のときはあまり意識していなかったけれど、ブレス記号も音符と同等の細心の注意が必要でした。
一番の問題は音質、音の響き・・これは付け焼き刃ではどうにもなりません。だからレッスンでソノリテ練習の時間があんなに長かったのだ、と今さらわかっても遅い・・。
それを今までおろそかにしてきたので、急に、良い音は出ない。時々はきれいな音をつくることはできるが、全ての音にヴィブラートをかけ響かせるのは非常に難しい。
9月のある日、いつものようにエチュードをやったあと、「アンダンテやってごらん」と言われ、一度ざっと吹いておおまかなチェックが入りました。
それからもレッスンはいつも通りにエチュードの練習だけ。
10月に一回、ピアノ併せ
さすがにこのときのレッスンはエチュードはやらずアンダンテだけで、まず私が吹き、チェックが入り、先生が演奏してみせてくれ、次にまた私が吹いてこの日は終わり。
11月10日リハーサル
その後のレッスンもアンダンテではなくエチュードの練習のみ。
11月23日が本番。あっさりしたもの。
先生の前で吹いたのはリハーサル含めて3〜4回で本番になりました。
発表会というのは日頃の練習成果を発表するだけで、練習曲の練習の方が優先で、発表曲は各自やっておく宿題にすぎない、ということでしょう。
さて、本番の結果は・・
4カ所くらいミスがあり、がっかりでした。リハーサルではミスはなく、もっとうまくいくと思ったのだけれど・・。
あとで録音CDを聞いてみると、音はまあまあ私としてはよく鳴っている。けれどミスがあってはどうしようもない。
吉田先生の教本に「楽譜は絶対に間違えてはいけません」と当たり前のことが書かれている。
確かに、間違えたら絶対にダメなのだ。瑕があっては音楽にならない。それが身にしみて感じられた発表会でした。
発表会は失敗だったけれど、アンダンテの練習効果はかなりあって、集中の仕方がわかったので、今練習しているガリボリディは毎週一曲合格のペースで順調に進んでいます。
先生にも「いい音出るようになった。フルートしているね。」と一度だけほめられ、やっとフルートの演奏とはどういうものかが分かり始め、練習が楽しくなってきました。
練習が楽しくなるまでに3、4年もかかるとは・・。「石の上にも3年」です・・。
2013年のレッスンは、ガリボルディのグランドエチュードのNO.8まで終了して終わりました。
追記;
モーツアルトがアンダンテを作曲したのは1778年で、フルートという楽器も今とはおそろしく異なり、出せる音も限られている。
(フルートに限らず、すべての楽器が今日のものとはちがい、不自由さがあったはず。)
その時代に、200年以上たった今でも、もっとも美しいとされる数々の音楽が作曲されたというのがとても不思議な感じです。
2013-12-27 19:59
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