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武満徹と小泉浩 [音楽]

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<小泉 浩〜武満 徹 生誕80年記念コンサート>に行ってきました。
2010/10/8 ルネこだいら中ホールにて

武満徹は、フルートの作曲ではいつも小泉浩の音色をイメージし、実際に吹いてもらい、時には二人で相談しながら曲作りをしたそうです。
武満徹が亡くなったのは66歳、そして武満徹生誕80年の今年、小泉先生が同じ66歳というのも、感慨深いことでした。

現代音楽とは言っても、こう世の中の移り変わりが激しいと、私には武満徹の音楽はもう古典のような気がしてしまいます。
武満徹は現代音楽の作曲家として海外でもっとも有名な日本の作曲家だと思いますが、自著の中で、パリで武満特集が企画されたとき、フランスの企画関係者がフランスの日本大使館に協力を依頼したら「そんなどこの馬の骨だかわからない者にお金は出せない」と言われたとユーモラスに書いています。日本では現代音楽がいかに聞かれていないか、物語っているようです。
その当時と今とを比べても、現代音楽に対する人々の反応はたいして変わっていないのではないかと思います。

武満徹は1996年に亡くなり、それ以後も多くの作曲家が素晴らしい曲を創っているのですが、その数少ないコンサートを聴きに行く人はまだとても少ないと思います。
小泉浩の前回のコンサートは『師と弟子の作品』というタイトルで、現代音楽の日本の大家(湯浅譲二、福士則夫、池辺晋一郎)とそのお弟子さんの曲を演奏しましたが、本当に素晴らしい音楽ばかりで、これをCDとして残さないのは非常にもったいないのではないかと思いました。

『海へ』を演奏したギタリストの佐藤紀雄氏もアンサンブル・ノマドという素晴らしい室内楽団を率いて現代曲を日本初演、世界初演で演奏していて、その常に前進あるのみの姿勢にはいつも感服してしまいます。

プログラムノートは小泉先生自身が飾りっ気のない言葉で書いておられるのでそれをもとに感想を書きとめておきます。

<マスク・・・2つのフルートのための>
小泉浩(フルート)  織田なおみ(フルート)
武満徹が初めてフルートのために書いた作品だそうです。
織田さんは小泉先生の弟子にあたる方。二本のフルートは良く調和し、この音色で会場の空気の色がふんわりとつくられました。

<ヴォイス・・・「声」>
小泉浩(フルート)
オーレル・ニコレに依頼されたフルートの特殊奏法の練習曲。
他の演奏家のヴォイスを何度か聞いたことがありますが、演奏家によってかなり印象も変わります。声を使うため表現の幅はより大きくなり個性が際だつ曲です。
オーレル・ニコレがどこまで細かく依頼をしたのかわかりませんが、武満徹は不思議な曲を創ったものだと思います。もちろん今ではそれほど奇異には聞こえませんが。

<海へ・・・アルト・フルートとギターのための>
小泉浩(アルトフルート) 佐藤紀雄(ギター)
この二人で世界初演をしています。本家本元。
小泉先生のアルト・フルート、佐藤紀雄氏のギターは、深く豊かでゆったりと流れ、まるで海の中に引き込まれるよう。この響きに身をまかせていると自分が海の中に漂っている気持ちになります。聴いている方は夢見心地ですが、ギターは実はとんでもなく難しい指使いを駆使しているらしい。

<巡り・・・イサム・ノグチの追憶に>
小泉浩(フルート)
武満徹が友人の彫刻家イサム・ノグチの死を悼んで創られた曲。
私もイサム・ノグチはとても好きで、魂をゆさぶるような力強さを持ったイサム・ノグチの作品を思いながらこの曲を聴きました。印象深い曲です。

<そして、それが風であることを知った・・・フルート、ビオラ、ハープのための>
小泉浩(フルート) 木村茉莉(ハープ) ヴィオラ(甲斐史子)
やはりハープとヴィオラというのは華やかですごい、とあらためて感じました。ハープが舞台にあるだけでもう何かちがいます。ボロローンと深いハープの音色、豊かで力強いヴィオラの音色、木村茉莉、甲斐史子という弾き手はすごいです。フルートもそれに呼応してビュービューと謳っているようでした。

<エア・・・「遺作」>
小泉浩(フルート)
オーレル・ニコレ氏の70歳の誕生祝いとして作曲されたもので、これが武満徹の遺作となりました。
「エアとは『歌』のことで、武満さんの『もっと歌いたい、もっと』の気持ちが込められている」とプログラムノートにありましたが、コンサートの最後の曲として、しみじみとした気持ちで聴けました。こういう遺作を残せるというのはやはりものすごいことです。

アンコール
<星たちの息子・・・エリックサティ作曲 / 武満徹 編曲>
小泉浩(フルート)  木村茉莉(ハープ)
とてもきれいな曲でアンコール曲としてふさわしかった。
コンサートの優しい締めくくりでした。

さて、武満徹は晩年にフルート協奏曲を書き始めていて、途中で絶筆となったそうです。小泉先生がそれを非常に惜しまれていらっしゃいました。
武満徹、小泉浩、二人の66歳のコンサート、とても良い音楽会で、このままCDとして残してほしいと思いました。
どんなにいいコンサートがあっても、時間や精神的に余裕がなければ聞きに行くことはむずかしいものです。そういう人のためにも、また後に聴いておきたかったと思う人のためにも、音楽を残しておくということも大切だと感じています。
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現代音楽初心者

sachat06様、今晩は。

私も行ってきました、10/8のルネこだいら。
素晴らしい演奏会でしたね。

私は今までに現代音楽に分類される類の演奏会には足を運んだことはなかったのですが、当日の演奏は気迫に満ちた素晴らしいものであったと思っています。

sachat06様の過去の記事にもあるように小泉先生は素人に対しても一切の妥協なく厳しいレッスンをする方のようですが、是非、機会があれば師事したいですね・・・。

因みに私が使用している楽器は1981年製のヘインズのエクストラライトのものです。仕上げのきめ細かさではsachat06様のお持ちの楽器には及ばないかもしれませんが、とても魅力のある楽器です。

また、書き込みをさせて下さい。宜しくお願い致します。



by 現代音楽初心者 (2010-10-13 02:50) 

sachat06

コンサート、本当に良かったですね。
メンバーもすごかったです!

小泉先生のレッスンはいつも汗ビッショリになってやっています。レッスンを受けられるなら早いほうがいいですよ。

私の楽器はなかなか気難しいところがあって、湿度、温度にかなり気を使います。最近やっと馴染んできたところです。


by sachat06 (2010-10-13 21:21) 

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