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12人の怒れる男たち・シドニー・ルメット監督 [映画]

1957年作のこの映画、当時はアメリカでは全く当たらなかったという。
12人の市民から選ばれた陪審員たちが、父親殺しの容疑で逮捕された少年
が有罪か無罪かを決める。1時間半、会議室に閉じこもり討論し合っている
だけの映画だ。全員一致でないと評決とならない。与党単独採決で大事な法
律をどんどん変えてしまうどこかの国にみならってほしい。
11人が有罪に挙手するが1人だけ(ヘンリー・フォンダ)が無罪に挙手す
る。理由は「自分が手をあげれば少年は有罪となり死刑になる。一人の少年
の命を5分かそこらの話で決めてはならないと思う。」だった。
「とにかくもっと時間をかけて一生懸命に考えよう」と提案する。野球の試
合を見たいとか、早く帰りたいとか他のみんなが思っているのに一人だけ、
待った、をかける。議論や怒鳴り合いやつかみ合いの挙げ句、1時間を超え
る時間がすぎ、全員が無罪という評決に達する。
この映画は、人間社会における正義、法のあり方、人が人を裁くことの難しさ、
またどんなに困難であっても議論を投げ出してしまってはならないのだ、とい
うことを鋭く訴えてくる。
50前にこれほどの映画をつくれるとは本当にすごい事だと思う。
これが民主主義だ、と感じさせる。やはりアメリカには本物の民主主義が、
昔も今も確かにあるのだ。
戦争ばかりしているアメリカだけど、その良心というのは、たとえ少数であっ
てもずば抜けているという気がした。
今はマイケル・ムーアやノーム・チョムスキーがアメリカの良心の代表だろう
か。 日本にこれだけの映画を作れる人はいないだろう。
宮崎駿がいるか。あの人は映画をつくる時「これで世の中を変えてみせる!」
という思いを込めてつくるのだと言っていた。「変わらないんだけどね。」と
も言っていたけど。だから宮崎作品はすごいのだろうな。


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herosia

「あなたの言っていることに、私はまるで同意しませんが、それを言うあなたの権利のためには、体を張っても戦います」(ヴォルテール)だそうだ。これが民主的であることの一つの大前提だ。本当に恥ずかしいのだがこれが日本にはない。政治的なチラシを投函しただけで逮捕され、無罪になるまで何ヶ月もかかり、すぐそのあとにまた同じ様な逮捕劇が繰り返されるのだから。実はこれもアーサービナード氏の受け売り。石原の再選が許されるのならまた民主化から遠ざかるのだよ。目覚めよ都民!
by herosia (2007-04-04 00:04) 

ゆき

日本は50年前から後退していくのか。
今読んでいる瀬戸内の「孤高の人」あまりおもしろくないなあと思っていたんだけど、それでも大正から昭和にかけて、すごい文人、女流作家がいたものだ,という事だけはよくわかって興味深い。共産党に協力しただろう、といきなり逮捕され投獄され、それを何事も起きなかったかのように淡々とした感じで受け止めている女性たち。すごいね。今のご時世見たら鼻先で笑うだろうね。石原支持は女が多いというのも暗示的です。
by ゆき (2007-04-04 00:17) 

solea01

その「政治的なチラシをまいて逮捕」された人間なんですが、実際に法廷に立つ羽目になった人間として興味深く見ました。高校時代に一回見たことがあるんですが、そのときと違う感慨がありますね。ヘンリーフォンダは一つの可能性を指摘したのに過ぎない。実は、この少年が真犯人なのかも知れないが、「疑わしきは罰せず」。この原則を貫いたわけです。はっきり、犯人だと言える証拠がない限りは有罪にすべきではないと。うちの弁護団の内田弁護士も高く評価していますね。(法廷にまで映画の話を出すのは、ちょっと、なんですが)。
by solea01 (2007-05-30 18:56) 

ゆき

solea01さん、はじめまして。アメリカは昔はいい映画をたくさん作っていますね。今のは全く見る気がおきませんが。ブログ読ませて頂きました。反戦ビラ事件、本当にひどいことでした。逮捕されるなんて経験はめったにあるものではないですね。(大正から戦後まで、そして60年代ははしょっちゅうだったようですが。)一番怖いのは、非道で酷い事が行われていて、回りの人間がそれに気付かないことだと思います。ネットのおかげで少しは真実を広める事ができるようになったのでしょうか。ネットの有害性も大きいので、良いのか悪いのか、判断がむずかしいですが。
このブログは自分の覚え書き、そしてただの趣味にすぎませんが、よろしくお願いします。
by ゆき (2007-05-30 21:33) 

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