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ベートーヴェン・チクルス/チョン・ミョンフン指揮 東フィル [音楽]


(旅行記はお休み)チョン・ミョンフン指揮、東フィル、ベートーヴェンの第4
番、第5番のコンサートの話。(7月23日 オペラシティにて)

ベートーヴェンのコンサートはおもに年末に聞くだけだったが、東フィルのベー
トーヴェンはまだ聞いてなかったし、斉藤和志氏が一番フルート、というので聴
きにいかないわけにはいかなくなった。コンサートの度に、ホームレスの人や、
インターネットカフェ難民、と呼ばれる人達のことが、頭をよぎり、こんな贅沢
をしていいのかと、後ろめたい気持ちがする。今回S席はやめてA席をお買い得
期間に買って、それでも9000円だった。敗戦直後のドイツでフルトヴェングラ
ー指揮のベルリンフィルのベートーヴェン5番の演奏には、それを聴くために家
財道具や家電製品を売ってまで、チケットを手に入れようとしたというが、誰も
彼もが辛い状況にいるのならともかく、今の日本のように貧富の差が大きく、困
難に直面している人が多いと、音楽を楽しむのもなぜか贅沢すぎる気がしてしま
う。もちろん、チケットをみんな買い控えたらオーケストラの人達が困るのだが
・・・。 考えても仕方のないことを少しぐずぐず考えるのは毎度のこと。

さて今回は2階正面4列目の真ん中で、バランスがよく全体が見渡せた。
一部の第4番。あまりなじみがない曲だが、3番と5番という、感情が噴出するよ
うな輪郭のはっきりした曲にはさまれて作曲されたこの曲は、ベートーヴェンら
しい堅固な構成を感じさせるが、なぜか地味な印象の曲だ。第一、第二楽章の斉
藤和志氏のフルートソロは美しかった。
一部が終わっただけというのに、チョン先生はもう喝采を浴びていた。

二部の第5番、
チョン・ミョンフン氏はこのベートーヴェンの5番を聞いて音楽家になることを
決意したという。観客の拍手に挨拶をし、オーケストラの方に向いたとたんに、
指揮棒は振り下ろされた。まるで、怒濤のように一楽章が始まった。
ベートーヴェンの怒りが聴衆の心臓を貫くような演奏の出だし。
ベートーヴェンはもうこの時は耳は聞こえなくなっている。この時のベートーヴ
ェンは何に対して怒りをぶつけたのだろうか。
私は、演奏を聴きながら、教育改革などと言って、ろくでもない人達が教育をず
たずたにした事に怒った。新教育基本法?教育3法? ふざけるな!!
チョン・ミョンフン氏の怒りはどこに向けられていたのだろうか。
第二楽章、怒りは静まり気持ちは少し穏やかになる。しかしあきらめはしない。
感情の奥深い所で怒りは静かにたぎっている・・。チョン氏の二楽章は、静かな
怒りと決意とも言える感情に、力強さがことに強調されていた。
第三楽章、断固とした決意、戦いへと人々の気持ちは向かう。戦うしかない。み
んなで力を合わせて戦っていく。戦いの気持ちはどんどん高まる。この戦いにお
ける、汚れのない魂を象徴するかのように、フルートソロがやさしく響く。
第四楽章、人々の気持ちは一気に高揚する。終に勝利だ!歓喜だ!何の勝利?
それは人間の愛だ・・!人間らしく生きていくための権利を勝ち取った喜びだ。

はっと気付いたら、演奏は終わり歓声と拍手の嵐だった。チョン先生も団員も
みなとても嬉しそう。とても短い時間に感じた5番だった。何度目かのアンコ
ールが終わりみな帰り始めたが、なぜかその場を立ち去りがたく、ステージを
見ていた。
と、2,3人の団員がステージに現れた。私は2階から1階へと走った。といっ
ても帰り客の人混みでなかなか前に進まない。やっと人混みを抜け、1階横手
の入り口のドアから会場に走り込んだ。間に合った。団員全員とチョン・ミョ
ンフン氏がステージ上にいて、私は氏としっかり握手できた。


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コメント 3

herosia

チョン・ミュンフンさんのベートーヴェン素晴らしいです。ベートーヴェンていうとウィーンのイメージが強いのですが、その音楽は意外とフレンチなのではないでしょうか。つまり世は革命、リベラシオンなのですよ。私の目下のベートーベンの愛聴盤もシューリヒトのパリ管だったりするのです。マエストロも活動の拠点はパリなわけで、第5、運命の主題は絶妙にはまってますね。熱狂的民族の勝利と歓喜を感じます。まあ世界は一つ。全人類の歓喜であって欲しいものです。東フィルはチョン・ミュンフン時代をむかえてすごくいいです。全集も買いでしょうか。
by herosia (2007-07-25 22:50) 

ゆき

コンサートの後で、家でクライバー指揮ウィーンフィルの5番を聴いてみたら、何か印象がちがっていましたね。別の感情が流れている。もっとソフトな感じで。
やはりあれは、チョン・ミョンフンのベートーヴェンだったのだ、と思った次第です。
by ゆき (2007-07-26 21:14) 

herosia

父クライバー(エーリッヒ)もよく聴くのですが、やはりナチズムの影というものを嗅ぎ取ってしまうというか、聴き取ってしまうのですね。そんな単純なものではないとしかられそうですが。それに比べればカルロスの5番は天才的な純粋音楽の極地ではないでしょうか。そしてチョン・ミョンフンの背後に、私はたしかに「民衆を率いる自由の女神」を見たのです。
by herosia (2007-07-26 23:02) 

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