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イタリアへの旅(3)〜キジアーナ音楽院〜 [旅行記]

DSCN0503.jpgキジアーナ音楽院の教室

シエナは、美術史上ではシエナ派と呼ばれる絵画が生まれ、イタリアのゴシック建築の典型である美しいドゥーモがあり、また伝統的な行事パリオ(カンポ広場の競馬)で有名だが、その上、キジアーナ音楽院(1932年創立)という国際的な音楽院があって毎年サマーセミナーが開かれている。
マウリツィオ・ポリーニ、サルヴァトーレ・アッカルド、ズービン・メータ、ダニエル・バレンボイム、リッカルド・シャイーらもこのサマーセミナーで学んだことがあるという。
ポリーニやマルタ・アルゲリッチがこのサマーセミナーで教授をしたことがあり、私が見学に行ったときはフルート部門の教授はエマニュエル・パユだったのだから、本当にすごいサマーセミナーだ

サマーセミナーでは、各楽器、声楽、指揮、作曲などの授業が行われ、各部門の生徒による発表会も毎夜のようにあった。

夏期講習を受けるには試験に合格しなければならず、この日は試験を受けたらしき楽器を持った日本人の音楽生を街中でけっこう見かけた。このときのセミナーのメンバーには日本人はあまりいなかったようだ。

私はフルートの聴講をしたのだが、他にピアノ科、弦楽四重奏なども自由に見学でき、マエストロ達とお話までできてしまったのだから感激だった。

DSCN0558.jpg弦楽科ファイナルレッスン
DSCN0555.jpgピアノ科の教室のレッスン風景

レッスンの聴講というのはいつも面白いのだけど、何しろこのときは先生がパユなので身体中耳にして(目にもなって)一心に聞いた。
まずレッスンを受ける人が曲を演奏する。それぞれどこかの音大生だったり、中にはプロになり始めの人もいて、みんなレヴェルがすごく高い。「うまいな〜」と感心してうっとりしていると、ストップがかかり、「そこはこうです。いろいろな解釈はあると思いますが、私はこんな風に演奏します。」とパユが実演する。そのときのあまりの違いにはただただ唖然とするばかりだった。
車に例えると3000cc以上の高級車と、軽自動車のちがいかな〜などと考えてしまった。さしずめ私は自転車まで行かず、三輪車ぐらいかな。

演奏に問題があるとき、「あなたのは、こうなっていますよ。」と問題点をくっきり強調して吹いてみせるのだから、恐れ入ってしまう。その問題の箇所の演奏があまりに見事に再演されてしまうので、つい笑ってしまうのだが、ステージ上であんな風に指導される方はすごくきついだろうと思う。
芸術の道は厳しく、容赦なく、ごまかしや甘えは通用しないのです。

レッスンの伴奏はアンジェリカという人で、彼女はどんな曲でもすばらしい伴奏をし、パユのレッスンにぴたりと息を合わせられ、本当に素晴らしい伴奏者だった。

パユは生徒に合わせてフランス語を使ったり、ドイツ語を使ったり、聴講生のために英語で説明したり、パッパと言語を切り変えるのにも驚きだった。

中に、目立ってうまいな、と思う人がいた。パユに「こういう風に」と言われて、言われた通りに演奏できてしまうのだからかなり才能がある人と、思った。ビルギット・ラムズルさんという人で彼女はその半年後グスタフマーラーユーゲントのメンバーとして来日した。(曲はマーラー6番、ピエール・ブーレーズ指揮。鮮烈なオーケストラだった。)
DSCN0577.jpgフルートレッスン

指揮科のファイナルコンサートはSt.Agostinoでソフィア祝祭管弦楽団の演奏で行われた。スペインの女性指揮者がとても素敵だった。またこのときの指揮者の中に日本の小栗次郎さんという方もいらっしゃった。
DSCN0529.jpg 指揮科リハーサル風景

午前中みっちりとレッスンを聴講し、午後は街をブラブラ、夕方はコンサートという数日間で、まああんなに贅沢な日々はめったにないでしょう。
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mami

はじめまして。タマラさん?shacha06さん?どのようによびかければよろしいでしょうか?maiさんのブログからきました。

息子がクラシックギターをやっておりまして、ぼちぼち留学など考えているようで、今のところ、キジアーナに一番関心があるとのことです。オスカーギリアさんがいらっしゃるということで。(今もレッスンをしているのか、サマーセミナーだけなのか、私にはわかりませんが。)来年三月には音楽仲間とイタリア旅行するそうで、そのときキジアーナも見てくるつもりのようです。
そんなときに、こちらのブログを拝見しましたのでとても感激しました。あいにく息子は明日まで不在ですが、帰ってきたら見せようと思います。
それと、ハリーポッターについて書かれていますが、私も同感で、ずっと残っていく名作だと思います。「子ども向け」と思われているのはもったいないことです。
強い人の中にある弱さ、単純ではない愛と憎しみの感情、恐怖に打ち勝つ勇気。とても言葉では表しきれない深さがありますよね。何度読んでも心が震えます。

それともうひとつ、つい先日天満敦子さんのコンサートに行ったのですが、すっかり虜になりました。そのときの感動を誰かと分かち合いたいと思っていたら、こちらのブログに書いてあったのでうれしくてうれしくて。会場で買った『祈り』をずっと聞いています。新譜と本はアマゾンに注文して、明日届く予定です。

まだ読んでない記事を、じっくり読んでいきます。旅のお話も、とってもすてき!初めての訪問なのに、興奮してたくさん書いてしまいました。またおじゃましま〜す!ありがとうございました。
by mami (2008-09-27 19:23) 

sachat06

>mamiさん、はじめまして、タマラです。
丁寧なコメントをありがとうございます。なんだか共通の話題が多いようで私もびっくりです。
息子さんがキジアーナを見に行かれるとのこと、楽しみですね!いろいろ貴重な情報が手に入ると思いますよ。今の若者は行動力があってうらやましいですね。

それから私は「ハリー・ポッター」の素晴らしさがわかる人を全面的に信頼してしまいます(笑)。それくらい価値のある本ですね。
天満敦子さんの音はすごい存在感がありますね。小品ではモンティのチャルダーシュが今の気分とピッタリ合ってとても好きです。
これからもどうぞよろしくお願いします。
by sachat06 (2008-09-28 21:18) 

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