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さようなら、ハリー・ポッター [読書]

終にハリー・ポッターのシリーズが終わってしまい、もうずいぶん前に最終巻読み終えていたのですが、J.K.ローリング女史に敬意を表し書いておこうと思います。この10年間、ハリーには本当に元気づけられたのですから。

暇つぶしにハリー・ポッター第一巻を読み始めたとき、これは子供の本じゃないか・・と流し読みするつもりでいたらとんでもなくて、子供向けのファンタジーのこのシリーズにはどれほど慰められたかわかりません。
大げさでも何でもなく、J.K.ローリンズは、人の悲しみ、恐怖、絶望、をとことん描いていて、読者はわずかな希望の光りを主人公ハリーと共に必死に探るのです。少年ハリーの孤独な生活の一日一日が、まるでいい年をした大人をも勇気づけるのだから本当に見事な本です。本を読んで、共感でき、慰められ、感情を深く呼び起こされ、胸が痛み、おまけに生きる勇気までもらえたというのは、読書でも得難い経験です。しかも10年間にも渡って。

良い本というのは、一気に読めること、また逆に少しずつ毎日20ページぐらいの読み方ができること、に象徴されるようです。途中で戻って読み返したくもなる、もったいなくて読むスピードをおさえたくなる・・これもすごい本の特徴。

第6巻で、ダンブルドア教授の死を納得できず、スネイプの裏切りに違和感を感じていた私も、最終巻で見事納得させられました。ハリーにもこれ以上の苦労はかけたくはないし、そろそろ幸せな休暇をあげるときだったのかもしれません。ハリー・ポッターシリーズの終わってしまうことを惜しんでいた気持ちが、読み終わって落ち着いたのも、J.K.ローリンズの筆致力のすごさと言えましょう。ハリーとダンブルドア教授の最後の対話は人間の存在を見据えた哲学の領域に及んでいました。

子供時代には本を読んで感動し、勇気がわくという経験を誰でも持つでしょうが、大人になるとそういうことはめったにありません。文学で同時代的に多くの人(世界中の!)の拠り所となる作品に出会えるのはもうないかも知れません。

DSCN0119.jpgキングズクロス駅
J.K.ローリングはロンドンのこのキングズクロス駅へ向かう列車の中でハりー・ポッターの着想を考えこの駅からからスコットランドのエディンバラに向かう列車が出ています。
私がキングズクロス駅でエディンバラ行きの列車を待っていたとき、ちょうどサマータイムになった日でしたが、駅の大時計は変わらないままで、私はひたすら列車を待ち、列車が出た後もまだ時計を信じて待ち続けていました。不安になり気が付いたときはとっくに列車は出た後でした。きつねにつままれた気分になったこのキングズクロス駅は、長距離列車の発着地の何とも言えない雰囲気があります。

DSCN0207.jpgオックスフォード大学の食堂
映画「ハリー・ポッター」ではオックスフォード大学がハリーの魔法学校として使われたとか。これはオックスフォードのクライスト・チャーチ・カレッジの学生食堂で、ここで教授と学生が一緒に昼食をとるというのだから、まるで映画のような話です。12時近くなると「そろそろ食事の時間なので見学は終わりです。」ときちんとした身なりのまるで執事のような係の人に言われました。実際にここで食事をしているとはビックリでした。
壁には大学の卒業生やら、教授らの肖像画がびっしり飾られ、ハリー・ポッターのお話のように、こういう肖像がの人物が絵の中から歩き回るのです。「不思議の国のアリス」の著者ルイス・キャロルの肖像画を見つけました。

DSCN0135.jpgエディンバラの旧市街
これは2001年3月の写真ですから、このときローリング女史はまだここで執筆していたのでしょうか、エディンバラのカフェで小説を書き始めたのが1994年だそうですが、エディンバラ旧市街は暗くものものしい空気がたれこめ、人を不安にさせるようなところがあり(少なくとも私にとってはそうでした)、「ハリー・ポッター」がここで生まれたのもとても自然に思えます。
このとき、私はまだ、「ハリー・ポッター」という本の存在を知らなかったのでした。

J.K.ローリングのの感性、考え方はまったくの素晴らしさ。新作短編集が近々出るそうでそれを楽しみにするとしましょう。

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コメント 5

あらじんらぶ

ハリーポッター・・・原作は読んでいないクチです(^^;
映画を見た程度で。

>人の悲しみ、恐怖、絶望→わずかな希望の光りを主人公ハリーと共に必死に探るのです
ううう。これは読まねば!

以前都内まで電車通勤だった頃はよく本を読んでいました。
すっかり本と御無沙汰。ゆっくり腰をすえて読みたくなりました。
by あらじんらぶ (2008-09-22 01:47) 

じゅんじゅん

私もハリーポッターは読んでいないクチです。でも、一度、どの編か忘れましたが図書館から借りてきてページを開いたことはあります。きっかけは、当時大変だった勤務する中学校のこれまたきかん坊の男の子が朝の読書の時間だけは不思議なくらい静かに読書に没頭していた姿を見たからです。彼が夢中になっていた本がハリーポッターだったのです。で、私はというと、うーん、翻訳本というのは(小説にしろ、なんとか金持ちじいさんのような成功本にしろ)、どうも、私は入っていけないところがあるのです。ヘミングウェイとかサマセット・モームとかは大丈夫でしたけどね。でも、タマラさんがそれほどまでに感動したというのなら、もう一度挑戦してもてもいいかなと思っています。
by じゅんじゅん (2008-09-23 17:03) 

sachat06

>あらじんらぶさん、こんにちは。
私も原作を読んだのは全くの偶然でしたが、毎年次の発売を心待ちにするようになり、ついには一度に読むのがもったいなくなり・・となりました。
映画の方は一作だけDVDで観ましたが、ハリーの面白さはアクションではないので、やはり原作がオススメ。
毎日15分ずつ読んでも楽しめる本ってそうはありませんよ。

>じゅんじゅんさん、中学生から大人までの熱烈なファンを
持った「ハリー・ポッター」は、本当にたいした作品です。
孤独に耐え歯をくいしばって戦ったけなげなハリー、こんなに主人公に感情移入したのは子供の頃以来です。 ドストエフスキーやトマス・マンやカフカなどの大作家の作品にもひけはとらないと思います。読まないなんてもったいない。

by sachat06 (2008-09-23 21:29) 

ayu15

その食堂でランチ食べたいです♪
by ayu15 (2008-10-04 11:28) 

sachat06

学生用のランチなのにしっかりテーブルがセットされていて最初は、展示用だと思いました。lunchの中身、食事風景を見たかったです。
by sachat06 (2008-10-05 04:41) 

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